帝国データバンクの調査によれば、事業継続計画(BCP)を策定済みの企業は21.4%と過去最高を更新した一方、未策定の企業は依然として40.7%にのぼります。BCPの中核をなす「人の安否把握」の手段として、安否確認システムへの関心は企業規模を問わず高まっています。
安否確認システムとは、災害や緊急事態が発生した際に、従業員へ一斉に安否確認の連絡を送り、回答を自動で集計する仕組みです。以下では、この仕組みが何を指すのか、企業に導入が求められる背景、主な機能とメリット、そして導入前に見落としがちな注意点を解説します。
安否確認システムとは
安否確認システムとは、災害や緊急事態が発生した際に、従業員の安否・被害状況・出社可否といった情報を一斉に収集し、自動で集計するクラウドサービスです。担当者が電話や電子メールで一人ひとりに連絡し、口頭やメモで状況を集約する従来のやり方では、従業員数十名の確認に半日以上かかることも珍しくありません。「連絡」と「集計」の両方を仕組みとして自動化し、担当者の判断と対応に時間を回せるようにする点に存在意義があります。
安否確認システムが確認する3種類の情報
安否確認システムが扱う情報は、本人の安否・被害状況・出社可否の3種類に整理できます。単に「無事かどうか」だけでなく、被災状況や勤務継続の可否まで一度に集約できる点が、電話連絡との大きな違いです。
| 種類 | 具体例 |
|---|---|
| 本人の安否 | 無事・軽傷・重傷・不明といった健康状態 |
| 被害状況 | 自宅・家族の被災状況、交通機関の運行状況 |
| 出社可否 | 出社できるか、テレワーク対応が可能か、待機が必要か |
安否確認システムとBCP・グループウェアとの違い
安否確認システムは、事業継続計画(BCP)を実行するための手段の1つで、グループウェアの通知機能とは目的が異なります。BCPは災害発生時に事業を継続・復旧させるための全体計画そのものを指し、安否確認システムはその中の「人の状況を把握する」工程を担う専用ツールです。グループウェアの一斉通知機能でも連絡自体はできますが、回答の自動集計や家族への安否確認といった専用機能は備えていない製品がほとんどです。
安否確認システムの導入が増えている背景
安否確認システムの導入が広がっている理由は、自然災害リスクへの意識の高まり・法律上の安全配慮義務・働き方の多様化の3点に整理できます。
事業継続計画(BCP)への意識が高まっている
中小企業のBCP策定率は18.3%と、大企業の39.9%との差が20ポイント以上開いています(帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2026年)」)。BCPの中核をなす「人の安否把握」の手段として、安否確認システムへの関心が中小企業でも高まっています。
労働安全衛生法上の安全配慮義務がある
労働安全衛生法第3条は、事業者に対して従業員の安全と健康を確保する配慮義務を課しています。緊急時に従業員の安否を速やかに把握し必要な対応を取ることは、この義務を果たす一環として位置づけられます。記録が自動で残るシステムを選ぶ企業が増えています。
テレワーク・多拠点勤務で所在把握が難しくなっている
テレワークを導入している企業の割合は47.3%にのぼります(総務省「令和6年 通信利用動向調査」)。従業員が本社・支社・自宅・出張先など複数の場所に分散して働く状況では、災害発生時に「誰がどこにいるか」を管理者が把握しづらくなります。
※各数値は2026年7月時点の調査に基づく参考値です。最新情報は各公表元の資料をご確認ください。
安否確認システムの主な機能5つ
安否確認システムの中心となる機能は、一斉通知・回答自動集計・再送、掲示板、位置情報確認、家族安否確認の5つです。
一斉通知機能
登録した従業員全員(または指定した部署・拠点)に、メール・SMS・アプリ通知・LINEなど複数の手段でメッセージを一斉送信する機能です。気象庁の地震速報と連動し、震度をトリガーに自動送信する製品もあります。担当者が一人ずつ電話をかける作業がなくなります。
回答の自動集計・再送機能
従業員から寄せられた選択式の回答をリアルタイムで集計し、未回答者・安否不明者を一覧表示します。代わりに不要になる作業は、Excelへの手作業での転記です。
掲示板・情報共有機能
災害情報や会社からの指示事項を、従業員がいつでも確認できる形で共有する機能です。社内メールや電話が使えない状況でも、指示を全員に届けられます。
位置情報・拠点管理機能
従業員のGPS情報や登録された勤務地をもとに、被災地域にいる従業員を絞り込んで表示する機能です。なぜ役立つかは、優先して連絡すべき従業員を素早く特定できるためです。
家族の安否確認機能
従業員本人だけでなく、あらかじめ登録した家族の安否も併せて確認できる機能です。従業員が家族の心配で出社判断に迷う時間を減らせます。
5つの中心機能のほかに、多言語対応、感染症の体調アンケート機能などを備える製品もあります。
安否確認システムを導入するメリット
安否確認システム導入で得られる効果は、状況把握の迅速化・対応工数の削減・安全配慮義務の証跡確保・平常時の活用の4点に整理できます。災害時だけでなく、平常時の運用に組み込めるかどうかが定着の分かれ目です。
状況把握までの時間を大幅に短縮できる
従業員数十名の連絡を電話で行うと数時間かかる作業が、一斉通知と自動集計により数分から数十分で完了します。事業の再開判断や取引先への連絡を、より早い段階で行えます。
担当者の対応工数を減らせる
送信も集計も自動化されるため、電話連絡や名簿への転記作業が不要になります。災害発生直後の混乱した状況で、担当者が他の対応に人手を割けることの価値は大きくなります。
安全配慮義務を果たした記録が残る
誰にいつ連絡し、いつ回答があったかがシステム上に自動で記録されます。安全配慮義務を果たしたことを客観的に示す資料として活用できます。
災害以外の場面でも活用できる
一斉通知や体調アンケートの機能は、感染症の流行時の体調確認、システム障害発生時の緊急連絡など、地震以外の場面でも活用できます。年に数回しか使わない機能ではなく、日常的な緊急連絡手段として運用している企業もあります。
導入前に確認したいデメリット・注意点
安否確認システムは導入しただけで効果が出るものではありません。検討段階で、通信障害時の限界・従業員への周知と訓練・個人情報の管理・料金体系の4点を確認しておくことをおすすめします。
大規模な通信障害時は通知が届かない場合がある
安否確認システムの多くはインターネット回線を利用するため、キャリアの通信障害や大規模停電が起きると通知そのものが届かない可能性があります。複数の通知手段(メール・SMS・アプリ)を組み合わせられる製品を選び、単一の回線に依存しない設計にしておくことが重要です。
従業員への周知と定期訓練が欠かせない
システムを導入しても、従業員が使い方を知らなければ回答は集まりません。連絡先の更新漏れや未回答を防ぐには、入社時の登録案内に加え、年1〜2回程度の訓練配信で操作に慣れてもらう運用が必要です。
家族情報を含む個人情報の管理責任が生じる
家族の安否確認機能を使う場合、従業員本人だけでなく家族の氏名や連絡先といった個人情報も預かります。データの保管場所やアクセス権限の設計、退職時のデータ削除手順は契約前に確認しておきたい項目です。
料金体系は製品によって仕組みが異なる
現在はクラウド型が主流となり、従業員数に応じた月額課金で数十名規模の企業でも導入しやすくなりました。ただし仕組みは製品によって差があります。SmartSpaceに掲載している安否確認システム4製品の公式サイトを2026年7月に確認したところ、無料プランを備える製品がある一方、最低利用人数や年間契約が必要な製品もありました。見積もりの際は、月額単価だけでなく最低契約人数・初期費用・通知件数の上限までを確認してください。
※料金体系は2026年7月時点の各社公式サイトの調査に基づきます。最新情報は各社公式サイトでご確認ください。
安否確認システムに関するよくある質問
Q. 安否確認システムはどのくらいの規模の企業から導入すべきですか?
明確な人数の基準はありませんが、電話連絡に半日以上かかる規模、つまり従業員数十名を超えたあたりから検討する企業が多くなります。従業員数が少なくても、複数拠点に分かれている、テレワークを導入しているといった場合は、規模にかかわらず検討する価値があります。
Q. 家族の安否確認にも対応していますか?
製品によって対応範囲は異なりますが、従業員本人が家族の連絡先をあらかじめ登録し、災害発生時に家族の安否も併せて報告できる機能を備える製品があります。対応の有無や登録できる家族の人数は、契約前に確認しておくことをおすすめします。
Q. 無料で使える安否確認システムはありますか?
利用人数や機能を絞った無料プランを提供している製品があります。ただし、無料プランは通知手段や登録人数に上限が設けられていることが多いため、自社の従業員数に見合うかを確認してください。製品ごとの料金プランは、安否確認システムのおすすめ4選を比較【2026年版】料金・機能・選び方で比較しています。
Q. 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
無料トライアルと従業員情報の登録が中心となるため、検討開始から本運用開始までは1〜3か月程度が目安です。従業員情報を人事システムから連携できる場合は、登録作業の期間を短縮できます。
まとめ
安否確認システムとは、災害や緊急事態が発生した際に、従業員の安否・被害状況・出社可否を一斉に収集し、自動で集計する仕組みです。
- 確認する情報は本人の安否・被害状況・出社可否の3種類。電話連絡との違いは連絡と集計の両方を自動化できる点
- 導入が増えている背景は、BCP策定の広がり・安全配慮義務・テレワークの普及の3点
- 主な機能は、一斉通知・回答自動集計、掲示板、位置情報確認、家族安否確認の5つ
- 導入効果は、状況把握の迅速化・対応工数の削減・義務履行の記録・平常時の活用の4点
- 注意点は、通信障害時の限界・従業員への周知と訓練・個人情報の管理・料金体系の確認の4点
自社に合う製品を具体的に比べたい場合は、安否確認システムのおすすめ4選を比較【2026年版】料金・機能・選び方で料金・機能・対象規模を一覧で確認できます。掲載サービスの一覧と資料請求は、安否確認システムのカテゴリページからご覧いただけます。
本記事は2026年7月時点のトヨクモ安否確認サービス2・セコム安否確認サービス・ANPIC・エマージェンシーコールの公式サイト、および帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2026年)」・総務省「令和6年 通信利用動向調査」を確認のうえ作成しています。料金・機能・提供条件は変更される場合があるため、契約前には各社公式サイトでご確認ください。