eKYCとは?機能・メリット・選び方をわかりやすく解説

eKYCとは?機能・メリット・選び方をわかりやすく解説

銀行口座の開設や電子マネーの登録では、法律にもとづいて本人確認が義務づけられる場合があります。eKYC(electronic Know Your Customer)は、こうした本人確認をオンライン上で完結させる仕組みとして広がってきた技術です。

本記事では、eKYCの定義、2027年の法改正を含む導入が増えている背景、主な機能、メリットと導入前の注意点、導入の進め方を解説します。自社の取引が法令上の確認義務の対象かどうかも含めて、確認方式を検討する際の材料としてお使いください。

eKYCとは

eKYC(electronic Know Your Customer)とは、本人確認書類の撮影やICチップの読み取りなどをスマートフォンやパソコンで行い、郵送や対面でのやり取りを介さずにオンライン上で本人確認を完結できる仕組みです。KYC(Know Your Customer、顧客確認)を電子的に行うことから、この名称が使われています。

対面や郵送による本人確認は、申込者が提出した本人確認書類のコピーと容貌を事業者側が目視で照合する運用が一般的でした。この方式は、書類の質感や厚みといった偽造の兆候まで見抜くことが難しく、偽変造書類によるなりすましを完全には防ぎきれない点が課題とされてきました。eKYCは、ICチップの読み取りや顔認証といった技術を組み合わせることで、確認の精度を保ちながらオンライン上での完結を可能にした仕組みです。

なお、eKYCは銀行口座開設や電子マネー、暗号資産、携帯電話の契約など、犯罪収益移転防止法上の取引時確認が義務づけられる業種で広く使われていますが、フリマアプリの本人確認や賃貸契約など、法令上の義務がない場面でもなりすまし対策として導入されています。

eKYCの導入が増えている背景

eKYCの導入が広がっている理由は、なりすましによる不正利用への対策強化が法制度上求められる一方で、オンラインで完結する契約・取引そのものが拡大しているためです。

犯罪収益移転防止法の改正で本人確認手法の見直しが求められている

警察庁(犯罪収益移転防止対策室)は、なりすましのリスクが高い本人確認方法を見直す犯罪収益移転防止法施行規則の改正を2025年6月24日に公布しました。運転免許証などの画像と自撮り画像を組み合わせて確認する、いわゆる「ホ方式」が原則廃止となり、ICチップの読み取りやマイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)を用いる方式へ移行することが求められます。施行は2027年4月1日を予定しており、対象事業者は切り替えを見据えた検討が必要です。

偽変造書類によるなりすまし被害への対策が急務になっている

上記の改正は、偽変造された本人確認書類を使って他人になりすまして口座などが開設され、これが特殊詐欺等に悪用されている実態を背景としています。画像の送信を受けるだけの確認方法は、書類の質感や厚みといった偽造の兆候を見抜きにくいという課題が指摘されており、ICチップの読み取りなど、より偽装されにくい確認手段への需要が高まっています。

※本節の内容は2026年8月時点で公表されている情報にもとづく参考情報です。制度の詳細・最新の施行状況は警察庁および所管省庁の公式発表でご確認ください。

eKYCの主な機能

eKYCサービスの主な機能は、本人確認書類の撮影・読み取り、容貌撮影・顔照合、ICチップ読み取り、不正・なりすまし検知、確認記録の保存・運用代行の5つです。

本人確認書類の撮影・読み取り

本人確認書類の撮影・読み取りは、運転免許証やマイナンバーカードなどをスマートフォンのカメラで撮影し、記載事項を読み取る機能です。

何が楽になるか:郵送での書類提出が不要になり、利用者はその場で申込みから本人確認まで完了できます。

容貌撮影・顔照合

容貌撮影・顔照合は、利用者自身の顔を撮影し、本人確認書類に記載された顔写真と照合する機能です。

確認担当者の負担軽減:目視での照合作業が自動化され、確認担当者の負担と判断のばらつきを抑えられます。

ICチップ読み取り(公的個人認証など)

ICチップ読み取りは、マイナンバーカードや一部の本人確認書類に内蔵されたICチップの情報を読み取り、記載事項の真正性を確認する機能です。

画像の送信だけでは、書類の質感や厚みといった偽造の兆候まで見抜くのは容易ではありません。ICチップの情報を読み取ることで、この検知精度を高め、なりすましのリスクを抑えられます。

不正・なりすまし検知

不正・なりすまし検知は、AIによる画像解析などを用いて、偽造書類や本人以外による申込みの兆候を検知する機能です。

審査業務への効果:目視では気づきにくい不審な申込みを自動でスクリーニングでき、審査担当者は疑わしい案件に絞って確認できます。

確認記録の保存・BPO(運用代行)

確認記録の保存・BPOは、本人確認の実施記録を法定の保存要件に沿って保管したり、目視での最終確認業務そのものを外部に委託したりできる機能です。

審査体制をゼロから構築する負担を抑えられる点がこの機能の利点です。記録の保存や確認業務を自社ですべて抱え込む必要がなくなります。

5つの中心機能のほかに、既存の会員登録システムに組み込むためのAPI・SDK提供、複数の確認方式を用途に応じて切り替えられる機能を備えるサービスもあります。自社の取引が犯罪収益移転防止法などの法令上の義務対象かどうかで、必要な確認レベルが変わります。

eKYCを導入するメリット

eKYCを導入するメリットは、本人確認完了までの時間短縮、利用者の離脱防止、確認業務の効率化、なりすまし検知精度の向上の4つに整理できます。

  • 本人確認完了までの時間を大幅に短縮できる:郵送に伴うタイムラグがなくなり、早ければ即日中に本人確認を終えられます。
  • 申込み途中の離脱を防止できる:書類が届くまで待つ間の離脱がなくなり、申込みから契約完了までを一連の流れで進められます。
  • 確認業務の工数を削減できる:書類の到着確認や目視での照合作業が自動化・効率化され、担当者は疑わしい案件の最終確認に集中できます。
  • なりすまし検知の精度を高められる:ICチップ読み取りやAIによる不正検知を組み合わせることで、画像だけの確認より偽装を見抜きやすくなります。

導入前に確認したいデメリット・注意点

eKYCは導入すればすべての本人確認業務が自動化されるわけではありません。導入前に2027年の法改正への対応・利用者側の操作負担・審査体制・料金体系の4点を確認しておくことをおすすめします。

  • 2027年の法改正を見据えた方式の選定が必要:現行の画像送信型(ホ方式)を前提に導入すると、2027年4月の施行以降に方式の見直しが必要になる可能性があります。ICチップ読み取りや公的個人認証に対応したサービスかどうかを事前に確認しておくことをおすすめします。
  • 利用者側の端末・操作に依存する部分がある:ICチップの読み取りにはNFC対応スマートフォンが必要になるなど、利用者の端末環境や操作への習熟度によって完了率が左右されます。
  • 法令上の義務対象かどうかで求められる確認レベルが異なる:犯罪収益移転防止法などの対象事業者は厳格な確認方式が必要になる一方、対象外の用途では簡易な確認で足りる場合もあります。自社の取引がどちらに該当するかを事前に整理しておく必要があります。
  • 料金体系によって初期費用の有無が異なる:サービスによって初期費用が発生するものと、初期費用0円で従量課金のみのものがあります。具体的な料金相場はeKYC(オンライン本人確認)のおすすめ4選を比較【2026年版】料金・機能・選び方で確認できます。

eKYC導入の進め方

eKYCの導入は、本人確認要件の整理 → 確認方式の検討 → 候補の比較・試験導入 → 本番運用と継続的な見直しの順で進めるのが一般的です。

ステップ 内容
1. 本人確認要件を整理する 自社の取引が犯罪収益移転防止法などの義務対象かどうか、求められる確認レベルを整理する
2. 確認方式を検討する 2027年の法改正も踏まえ、ICチップ読み取りや公的個人認証に対応した方式を候補に含める
3. 候補を比較し試験導入する 導入方法(API・SDK・タグ設置)や料金体系で2〜3サービスに絞り、一部の申込みフローで試験的に導入する
4. 本番運用と継続的な見直しを行う 本人確認の完了率や不正検知の状況を継続的に確認し、必要に応じて方式を見直す

法令上の義務対象となる取引を扱う場合は、社内の法務・コンプライアンス部門と要件を確認したうえで候補を絞り込むことをおすすめします。

eKYCに関するよくある質問

Q. eKYCとKYCは何が違いますか?

確認の手段が異なります。KYC(Know Your Customer)は本人確認・顧客確認そのものを指す広い概念で、対面や郵送での確認も含みます。eKYCはそのうち、スマートフォンなどを使ってオンライン上で完結させる方式を指す言葉です。

Q. 2027年の法改正で今使っている方式は使えなくなりますか?

画像送信のみで完結する方式(ホ方式)は、2027年4月の施行以降、原則として利用できなくなる予定です。現在この方式を利用している場合は、ICチップ読み取りや公的個人認証に対応した方式への切り替えを検討しておく必要があります。

まとめ

eKYCとは、スマートフォンなどを使って本人確認をオンライン上で完結できる仕組みです。

  • 定義は郵送や対面を介さずオンラインで本人確認を完結する仕組み。KYC(本人確認全般)のうち、電子的に行う方式を指す
  • 導入が増えている背景には、2025年6月に公布された犯罪収益移転防止法施行規則の改正(2027年4月施行予定)と、偽変造書類によるなりすまし対策の必要性がある
  • 主な機能は、本人確認書類の撮影・読み取り、容貌撮影・顔照合、ICチップ読み取り、不正・なりすまし検知、確認記録の保存・BPOの5つ
  • 導入前には、2027年の法改正を見据えた確認方式の選定と、自社の取引が法令上の義務対象かどうかを確認しておく
  • 法令上の義務対象となる取引では、社内の法務・コンプライアンス部門との要件確認を経てから候補を絞り込む

自社に合うサービスを具体的に比較したい場合は、eKYC(オンライン本人確認)のおすすめ4選を比較【2026年版】料金・機能・選び方で、料金・機能・対応する確認方式を一覧で確認できます。掲載サービスの一覧と資料請求は、eKYC(オンライン本人確認)のカテゴリページからご覧いただけます。

本記事は、2026年8月にSmartSpace掲載のeKYCサービス4サービスの公式サイトを確認し、機能・料金の公開状況を整理したうえで作成しています。制度に関する記述は警察庁(犯罪収益移転防止対策室)の公表情報を参照しました。料金・機能・提供条件、制度の施行状況は変更される場合があります。契約前には必ず各社の公式サイトおよび所管省庁の公式発表でご確認ください。

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