2025年10月にWindows 10のサポートが終了し、更新プログラムが提供されない端末が社内に残っていないかを一斉に確認する必要に迫られた企業は少なくありません。「社内のPCが何台あり、どんなソフトが入っているか正確に把握できていない」という状態のままでは、こうした一斉点検自体が難航します。この記事では、IT資産管理の基本を整理します。
具体的には、IT資産管理の定義、導入が広がっている背景、主な機能、導入のメリットと注意点、検討の進め方に絞って解説します。製品ごとの具体的な料金・機能を比べたい場合は、後述する比較記事もあわせてご覧ください。
IT資産管理とは
IT資産管理とは、企業が保有するPC・スマートフォン・サーバーなどのハードウェアと、そこにインストールされたOS・ソフトウェア・ライセンスの情報を継続的に把握し、適切に管理する活動です。この活動を自動化するシステムを「IT資産管理ツール」と呼びます。
この管理が求められる背景には、Excelの台帳による手作業の限界があります。端末の入れ替えやソフトウェアの更新頻度に人手での更新が追いつかず、気づかないうちに保有ライセンス数と実際の利用状況にずれが生じたり、退職者が使っていた端末の所在が把握できなくなったりする状態に陥りやすくなります。台帳の正確性が崩れると、後述するセキュリティリスクの見落としやコストの無駄にも直結するため、継続的な把握そのものが管理活動の出発点になります。
資産管理(会計上の固定資産管理)との違い
似た言葉に「資産管理」がありますが、会計上の固定資産管理が取得価額や減価償却を扱うのに対し、IT資産管理はハードウェアの構成やソフトウェアの利用状況、セキュリティ上のリスクといった技術的な側面を扱う点が異なります。
IT資産管理とMDM(モバイル端末管理)の違い
IT資産管理はPC・ソフトウェアライセンスを含むIT資産全般の台帳管理・棚卸に重心があるのに対し、MDMはスマートフォン・タブレットの遠隔ロックや紛失時のリモートワイプなど、モバイル端末のセキュリティ設定・制御に機能を絞っている点が異なります。両者の機能を一体で備える製品もありますが、管理したい対象が「IT資産全体の台帳」なのか「モバイル端末のセキュリティ」なのかで軸足が変わります。詳しくはMDM(モバイル端末管理)とは?機能とメリットをわかりやすく解説で解説しています。
IT資産管理の導入が増えている背景
IT資産管理の導入が広がっている背景には、サイバーセキュリティ対策の要請・テレワーク端末の増加・OSのサポート終了への対応という3つの動きがあります。
- サイバーセキュリティ経営ガイドラインが対策を後押ししている — 経済産業省とIPAが公表する「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」は、経営者が主導すべき対策の一つとして資産の把握を位置づけています。自社がどの端末・ソフトウェアを保有しているかを把握できていなければ、脆弱性への対応やセキュリティ投資の判断自体ができません
- テレワークで社外に持ち出す端末が増えた — 総務省の「テレワークセキュリティガイドライン」でも指摘されているとおり、テレワーク端末は紛失・盗難やマルウェア感染のリスクが社内利用時より高まります。社外に出た端末の状態を可視化する必要性が、IT資産管理ツールの導入理由になっています
- Windows 10のサポートが終了した — Windows 10は2025年10月14日にサポートが終了し、以降はセキュリティ更新プログラムが提供されません。社内に未対応の端末が残っていないかを一斉に把握するうえで、IT資産管理ツールによる棚卸しが有効です
※制度・サポート終了日は2026年8月時点で確認できた公表情報に基づく参考値です。最新情報は各公表元の情報でご確認ください。
IT資産管理の主な機能
IT資産管理ツールの中心となる機能は、インベントリ収集・資産台帳管理・ライセンス管理・操作ログ管理・デバイス制御の5つです。製品によって呼び方や対応範囲は異なりますが、この5つはほぼ共通して備わっています。
インベントリ収集
各端末にエージェントを配布するなどの方法で、ハードウェア構成やインストール済みソフトウェアの情報を自動収集する機能です。巡回棚卸しをなくす:担当者が一台ずつ端末を回って確認する棚卸し作業が不要になります。
資産台帳管理
収集した情報を、購入日・保管場所・利用者とひもづけて台帳として一元管理する機能です。何が楽になるか:資産台帳管理により、Excel台帳への手入力と更新漏れがなくなります。
ライセンス管理
保有しているソフトウェアライセンスの数と、実際にインストールされている数を突き合わせる機能です。余分なライセンス費用を払い続けていないでしょうか。保有数と利用実態を自動で突き合わせられるため、契約超過や未使用ライセンスへの支払いに気づきやすくなります。
操作ログ管理
ファイル操作やWebアクセス、印刷といった端末の操作履歴を記録する機能です。何が楽になるか:操作ログ管理により、情報漏洩の疑いが生じた際に原因を後から追跡できます。
デバイス制御
USBメモリなど外部デバイスの接続や利用を制限する機能です。持ち出し・持ち込みを未然に防ぐ:データの持ち出しや、外部デバイス経由でのウイルス混入を防ぎやすくなります。
5つの中心機能のほかに、OSやソフトウェアの更新プログラムを一括で配布する機能や、スマートフォン・タブレットを管理するMDM(モバイル端末管理)機能を備える製品もあります。
IT資産管理を導入するメリット
IT資産管理ツール導入で得られる効果は、次の5点に整理できます。
- 棚卸し業務の効率化 — 手作業での台帳更新が不要になり、担当者の作業時間を減らせる
- コストの適正化 — 使われていないライセンスや、稼働していない端末の保守費用を見つけられる
- セキュリティリスクの可視化 — 更新プログラムが適用されていない端末や、サポートが終了したOSを一覧で把握できる
- 内部統制・監査対応のしやすさ — 資産の保有状況や操作ログを、証跡として提示しやすくなる
- 情報漏洩の抑止と原因調査の迅速化 — 誰がいつどの端末で何をしたかを記録でき、万一の際の調査にも役立つ
とくに効果を感じやすいのは、端末数が数十台を超えて手作業の台帳では管理しきれなくなってきた組織や、テレワーク端末が社内・社外に混在している組織です。
導入前に確認したいこと(デメリット・注意点)
導入すれば自動的に資産が整理されるわけではありません。次の4点を検討段階で確認しておくことをおすすめします。
- 導入・運用にコストがかかる — 多くのツールが端末台数に応じた料金体系で、台数が多いほど費用も増える。管理したい範囲(資産管理のみか、ログ管理まで含むか)を先に決めておくと、必要以上のプランを選ばずに済む
- エージェントの配布・設定に手間がかかる — 各端末にエージェントソフトを導入する必要があり、対象端末が多いほど初期設定の工数が増える
- 収集した情報の運用ルールが必要 — 情報を集めるだけでは棚卸しは完了しない。誰が台帳を確認し、どのタイミングで更新するかという運用ルールを決めておく必要がある
- 対応OS・デバイスの範囲を確認する必要がある — Windows以外にMac・iPhone・Androidも管理したい場合、対応範囲がツールによって異なる。料金体系や機能の詳しい比較はIT資産管理ツールのおすすめ4選を比較【2026年版】料金・機能・選び方で解説しています
IT資産管理導入の進め方
IT資産管理ツールの導入は、管理対象の整理 → 候補の比較・資料請求 → トライアル → スモールスタート → 全社展開という流れで進めるのが一般的です。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 管理対象と目的を整理する | 管理したい端末の種類・台数と、資産管理のみか情報漏洩対策まで含むかを決める |
| 2. 候補を比較・資料請求する | 提供形態(クラウド/オンプレミス)・対応OS・料金体系をもとに2〜3サービスに絞る |
| 3. トライアルで試す | 無料トライアルがあるツールは、実際の管理画面や収集される情報を確認する |
| 4. 一部部署から試験導入する | 特定の部署でエージェントを配布し、収集される情報や運用の負荷を確認する |
| 5. 全社へ展開する | 試験導入で洗い出した課題を解消したうえで、対象端末を順次拡大する |
最初から全端末・全機能で始めるのではなく、一部の部署から段階的に広げるほうが運用ルールを整えやすくなります。
IT資産管理に関するよくある質問
Q. IT資産管理ツールの料金相場はどのくらいですか?
多くのツールが端末台数に応じた課金体系で、資産管理のみのシンプルなプランと、操作ログ管理まで含むプランとで単価が変わります。具体的な料金例はIT資産管理ツールのおすすめ4選を比較【2026年版】料金・機能・選び方で紹介しています。
Q. クラウド型とオンプレミス型はどちらを選ぶべきですか?
初期コストと運用の手間を抑えたい場合や、テレワーク端末を管理したい場合はクラウド型が有力です。閉域ネットワークでの運用や自社ポリシーに合わせた細かな構成が必要な場合はオンプレミス型を検討しましょう。両方を提供するツールもあります。
Q. 中小企業でも導入する価値はありますか?
端末数が少なくても、手作業の台帳更新に時間がかかっている、退職者の端末回収に漏れがあったといった課題があれば効果は出やすくなります。少ないライセンス数から契約できるツールもあり、費用面のハードルは以前より下がっています。
まとめ
IT資産管理とは、企業が保有するPC・スマートフォン・サーバーなどのハードウェアと、そこにインストールされたソフトウェア・ライセンスの情報を継続的に把握し、適切に管理する活動です。
- サイバーセキュリティ対策の要請・テレワーク端末の増加・Windows 10のサポート終了を背景に導入が広がっている
- 主な機能はインベントリ収集・資産台帳管理・ライセンス管理・操作ログ管理・デバイス制御の5つ
- メリットは棚卸し業務の効率化、コストの適正化、セキュリティリスクの可視化、内部統制対応、情報漏洩の抑止
- 注意点は導入・運用コスト、エージェント配布の手間、運用ルールの整備、対応OSの範囲確認
- 導入は管理対象の整理から全社展開まで、段階を踏んで進めると定着しやすい
自社に合うツールを具体的に比べたい場合は、IT資産管理ツールのおすすめ4選を比較【2026年版】料金・機能・選び方をご覧ください。掲載サービスの一覧と資料請求は、IT資産管理のカテゴリページからご利用いただけます。
制度・サポート終了日に関する情報は2026年8月時点の調査に基づく参考値です。最新情報は経済産業省・総務省・Microsoft各公式サイトでご確認ください。